相続した訳あり物件の売り方・手放し方|再建築不可・共有名義・借地など
- 訳あり物件でも売れないわけではありません。まず、何が「訳あり」なのか(道路・権利・法律の制限・心理的な事情・災害)を役所や法務局で確かめます。
- 共有持分は自分の分だけなら売れます。借地の上の家は、売るときに地主の承諾(得られなければ裁判所の許可)が必要です。
- 値段を大きく左右するのは「買った人が建て替えられるか」。役所で確認した資料を用意しておくと話が進みやすくなります。
- 業者の買取はクーリング・オフできません。隣の人への売却、国庫帰属、相続放棄(3か月以内)とも比べて決めましょう。
この記事の目次
実家はどの「訳あり」?チェック
当てはまるものを選んでください。最初に確かめることと、読むべき章が出ます。
再建築不可(道路に2m接していない)
家を建てる土地は、建築基準法上の「道路」に2m以上接していなければなりません(建築基準法43条)。旗竿地などでは、都道府県などの条例でさらに厳しい条件(3m以上など)が付くことがあります。古い住宅地では、この条件を満たさず、今の家を取り壊すと新しく建てられない土地があります。これが「再建築不可」です。
- 前の道が「道路」かどうか:建築基準法の道路には、道路法の道路、位置指定道路、幅4m未満でも指定された「2項道路」などの種類があります。2項道路に面している場合は、原則として道の中心から2mまで下がって建てる(セットバック)ことで建てられます(反対側が崖や川なら反対側の端から4m、指定区域では中心から3mの場合もあります)。
- 認定・許可で建てられることも:道路に接していなくても、周りに広い空き地があるなど条件を満たせば、特定行政庁の認定・許可(建築基準法43条2項)で建てられる場合があります。
- 調べ方:市区町村(建築の担当がない町村は都道府県の土木事務所など)の建築指導の担当で、前の道の種類を確認します。道路の種類を地図で公開している市区町村もあります。
- 直して使う場合の注意:2025年4月から、木造2階建て(または延べ面積200㎡を超える木造平屋)の家でも、壁・柱・床・はり・屋根・階段のいずれかの半分を超える大規模な修繕・模様替えには建築確認が必要になりました。どこまで直せるかは市区町村に確認してください。
なお「既存不適格」は、建てた当時は適法だったが、その後の法律の改正で今の基準に合わなくなった建物です。建てた当時から違反していた「違反建築物」とは違います。
兄弟などとの共有名義
- 自分の持分だけなら売れる:ほかの共有者の同意はいりません。ただし買い手は限られ、価格も低くなりやすいです。
- 家全体を売るには全員の同意:共有物を変える・処分するには全員の同意が必要です(民法251条)。貸す(建物3年・土地5年以内)など管理にあたることは、持分の過半数で決められます(民法252条)。
- 話がまとまらないとき:共有者はいつでも共有の解消(分割)を求められ、話し合いで決まらなければ裁判所が、土地などを分ける方法か、1人が取得してほかの共有者にお金を払う方法で分け、それができないときは競売で売って代金を分けます(民法256条・258条)。ただし、遺産分割がまだ済んでいない相続の共有は、この手続きではなく家庭裁判所の遺産分割(調停・審判)で進めます(原則として相続開始から10年までは同じ、民法258条の2)。
- 所在が分からない共有者がいる:2023年4月から、裁判所の決定(持分の時価にあたるお金の供託が必要)で、その人の持分を取得したり、家全体を売ったりできるようになりました。居場所は分かっているのに返事がないだけの人は対象外です。ただし相続で共有になった場合は、相続開始から10年たたないと使えません。
これから相続する家なら、共有にせず1人が受け継ぐか、売って分ける方法もあります。兄弟で分けるシミュレーターで手取りを比べられます。
借地の上の家
- 相続するとき:相続は借地権の「譲渡」にあたらないため、地主の承諾はいらず、名義書換料を払う法律上の義務もないと一般に解されています。相続人以外の人に遺贈する場合は、一般に承諾が必要とされます。
- 売るとき:土地の賃借権の場合、借地の上の建物を売るには、地主の承諾が必要です。地主に不利がないのに承諾してもらえない場合は、裁判所に承諾に代わる許可を求められます(借地借家法19条)。この場合、裁判所がお金の支払いなどを条件にすることがあります。
- 地主に買ってもらう:地主が建物と借地権を買い取る、または底地(地主の権利)と一緒に売る、という方法もあります。
市街化調整区域
市街化調整区域は「市街化を抑えるべき区域」で、家を建てたり建て替えたりするには原則として許可が必要です(都市計画法7条・29条・43条)。特に、農家の分家住宅など「その人だから」許可された家は、ほかの人が住むと違反になることがあります。売る前に、都道府県・市の開発指導の担当で、建て替えの条件と、その家が建てられたときの許可の内容を確認してください。
人が亡くなった家(事故物件)
国土交通省のガイドライン(2021年10月)では、不動産会社が買主に伝えるべきことの目安を次のように示しています。
- 自然死や、家の中での日常的な事故(転倒・誤嚥・入浴中の事故など)は、原則として伝えなくてよい。ただし、発見が遅れて特殊清掃などが行われた場合は除く
- それ以外の死は伝えるのが原則。賃貸ではおおむね3年が過ぎれば伝えなくてよいとされるが、売買には期間の目安がない
- 買主から聞かれた場合や、社会的な影響が大きい事件の場合は伝える必要がある
個人の売主には、売った後の責任(契約不適合責任)があります。知っていることは不動産会社に伝え、告知書に正直に書きましょう。
災害の危険がある・境界が分からない
- 災害の危険:2020年8月から、売買・賃貸の重要事項説明で、水害ハザードマップ上の物件の位置を説明することが義務になりました。土砂災害警戒区域なども説明されます。売主として知っている浸水などの経験は伝えましょう。
- 境界が分からない:土地家屋調査士に測量を頼み、隣の人と境界を確認します。話がまとまらないときは、法務局の筆界特定制度で登記上の境界(筆界)を明らかにしてもらえます(所有権の範囲を決める制度ではありません)。
- 隣の木の枝が越境している:2023年4月から、催告しても切ってもらえない場合などには、越境した枝を自分で切れるようになりました(民法233条)。
手放す方法を比べる

- 仲介で売る:まず訳ありの物件も扱う不動産会社に相談します。役所で確認した資料があると話が早く進みます。
- 業者の買取:訳あり物件を専門に買い取る業者もあります。早く手放せますが、業者が買主の場合はクーリング・オフができません(国民生活センター)。複数社で比べ、その場で契約しないようにしましょう。
- 隣の人に売る:再建築不可や狭い土地でも、隣の人にとっては土地を広げられる価値があります。
- 相続土地国庫帰属制度:土地だけを国に引き取ってもらう制度です。建物がある土地、担保が付いている土地、通路など他人が使う予定の土地、土壌汚染されている土地、境界が分からない・争いがある土地は申請できません。崖や除去が必要な物がある土地なども不承認になります。審査手数料1筆14,000円と負担金がかかります。
- 相続放棄:自分が相続人になったと知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(期間の延長を申し立てることもできます)。その家だけを放棄することはできず、預貯金なども含めてすべての財産を放棄することになります。放棄した時に実家を現に占有している人は、次に引き継ぐ人に引き渡すまで保存する義務が残ります(民法940条)。
相続税の評価が下がることも
相続税を計算するとき、訳あり要素が評価額を下げることがあります(国税庁)。
- 道路に接していない土地(無道路地)や、接道義務を満たさない土地は、通路を作る費用などを差し引いて評価します。
- 道路との高低差、騒音・日照の悪さ、忌みなどで利用価値が著しく下がっている宅地は、その部分の評価を10%下げられる場合があります(路線価などにすでに反映されている場合を除く)。
- 借地の上の家なら、相続するのは土地ではなく借地権で、「自用地としての評価額×借地権割合」で評価します(借地権割合は路線価図・評価倍率表に表示)。
適用できるかどうかは土地ごとに違うので、税理士に相談してください。
よくある質問
再建築不可の家は売れませんか?
売れないわけではありません。前の道や周りの空き地の状況によっては、特定行政庁の認定・許可(建築基準法43条2項)で建てられる場合があり、隣の土地の一部を買って道路に2m接するようにする方法もあります。そのままの状態でも、隣の家の人や、訳あり物件を扱う業者が買うことがあります。
共有している家を、自分の持分だけ売れますか?
自分の持分だけなら、ほかの共有者の同意がなくても売れます。ただし家全体を自由に使えるわけではないため、買い手は限られ、価格も低くなりやすいです。家全体を売るには共有者全員の同意が必要で、話がまとまらなければ、裁判所に共有物の分割を求める方法があります(民法256条・258条)。遺産分割がまだ済んでいない場合は、家庭裁判所の遺産分割の手続きで進めます。
借地の上の家を相続するのに、地主の承諾や名義書換料は必要ですか?
相続は、借地権を他人に売る「譲渡」にはあたらないため、地主の承諾は不要で、名義書換料を払う法律上の義務もないと一般に解されています(民法896条・612条)。ただし相続人以外の人に遺贈する場合は譲渡と同じ扱いになり、承諾が必要です。地主には相続したことを伝え、地代は引き続き払いましょう。
事故物件は、何年たてば伝えなくてよいですか?
国土交通省のガイドラインでは、自然死や家の中での事故(転倒・入浴中の事故など)は原則として伝えなくてよいとされています(発見が遅れて特殊清掃などをした場合を除く)。それ以外の死について、賃貸ではおおむね3年が目安ですが、売買には期間の目安がありません。買主から聞かれた場合や、社会的な影響が大きい事件の場合は伝える必要があります。
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出典と、この記事の作り方
実家ノート編集部が、下の公的資料を読んで作成しました。法令の内容は 2026年10月3日 に確認しています。制度は改正されることがあるため、申告や手続きの前に、必ず出典元と税務署・専門家にご確認ください。
- e-Gov法令検索 建築基準法(3条・42条・43条)
- 国土交通省 建築基準法43条2項1号の認定制度(2018年9月施行)
- 国土交通省 2025年4月からの建築確認の見直し(4号特例の縮小)
- e-Gov法令検索 民法(206条・233条・249条〜262条の3・612条・896条・915条・940条)
- 法務省 共有制度の見直し(2023年4月施行)
- e-Gov法令検索 借地借家法(19条)
- 東京地方裁判所 借地非訟とは
- e-Gov法令検索 都市計画法(7条・29条・43条)
- 八千代市 市街化調整区域の建物の売買・賃貸の注意
- 国土交通省 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
- 国土交通省 重要事項説明への水害リスク情報の追加(2020年8月)
- 法務省 筆界特定制度
- 国民生活センター 自宅の売却をめぐるトラブル
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要
- 国税庁 No.4620 無道路地の評価
- 国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価
- 国税庁 No.4611 借地権の評価