相続した家・土地を売ったときの税金|計算のしかたと使える特例
- 税金がかかるのは売って利益が出たとき。利益=売却価格−(取得費+売るための費用)−特別控除です。
- 相続した家は、亡くなった人が買った値段と時期を引き継ぎます。値段が分からなければ売却価格の5%を取得費にできます。
- 税率は多くの場合約20%(長期)。空き家の3,000万円控除などの特例で、ゼロになることもあります。
この記事の目次
売ったときにかかる税金は3種類
| 税金 | かかるとき | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 譲渡所得税・住民税 | 売って利益が出たとき | 利益の約20%(短期は約40%) |
| 印紙税 | 売買契約書を作るとき | 契約金額で決まる(1,000万円超5,000万円以下なら1万円。2027年3月31日までの軽減税率) |
| 登録免許税 | 住宅ローンの抵当権が残っていて、外すとき | 土地・建物それぞれ1件につき1,000円(一戸建てなら通常2,000円) |
金額が大きくなるのは譲渡所得税と住民税です。この記事では主にこの2つを説明します。なお、相続した家を売る前には、名義を相続人に変える相続登記が必要です。
譲渡所得税の計算のしかた
税金がかかるのは、売った金額そのものではなく利益(譲渡所得)です。
- 取得費:亡くなった人がその家・土地を買ったときの代金など(次の章で説明します)
- 売るための費用(譲渡費用):仲介手数料、売主が払う印紙税、売るために家を取り壊した費用、測量費など。固定資産税や修繕費は入りません
- 特別控除:空き家の3,000万円控除など、条件を満たすと差し引ける額
相続した家の「取得費」の考え方
相続した家・土地の取得費は、亡くなった人が買ったときの代金をそのまま引き継ぎます。相続したときの評価額ではありません。
建物は古くなった分を差し引く
建物は年数とともに価値が下がるため、買ったときの代金から減価償却の分を差し引きます。住まいとして使っていた建物の場合、「建物の代金×0.9×償却率×経過年数」(6か月以上の端数は1年)で計算し、代金の95%が上限です。償却率は木造で0.031、鉄筋コンクリート造で0.015です。
代金が分からなければ「売却価格の5%」
親が何十年も前に買った家は、契約書が残っていないことがよくあります。その場合は、売却価格の5%を取得費にできます(概算取得費)。実際の取得費が分かっても5%より少ない場合は、5%を使えます。
相続のときの登記費用も足せる
貸したり事業に使ったりしていなかった家なら、相続のときに相続人が払った登記費用や不動産取得税も取得費に含められます。ただし、5%の概算取得費を使う場合は足せません。
税率:長期か短期か
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかで決まります。相続した家は、亡くなった人が買った時期から数えます。
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 長期(5年超) | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期(5年以下) | 30% | 9% | 39.63% |
合計には、所得税の2.1%分(復興特別所得税)を含みます。2027年分からは復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%になりますが、合計の税率は変わりません。
たとえば2026年に売る場合、2020年12月31日以前に買った家なら長期です。親が長く住んでいた家なら、ほとんどの場合は長期になります。
計算例:3,000万円で売った場合
親が昔買った家(代金は分からない)を、2026年に3,000万円で売った例です。特例は使わないものとします。
| 売却価格 | 30,000,000円 |
|---|---|
| 取得費(売却価格の5%) | −1,500,000円 |
| 仲介手数料(上限) | −1,056,000円 |
| 課税される利益 | 27,444,000円 |
| 所得税(15%)+復興特別所得税 | 4,203,000円 |
| 住民税(5%) | 1,372,200円 |
| 税金の合計 | 5,575,200円 |
同じ家で空き家の3,000万円控除が使えれば、利益(27,444,000円)がすべて差し引かれ、税金は0円になります。特例の有無で、税金が500万円以上変わることがあるわけです。
譲渡所得税の計算シミュレーターで、自分の数字を入れて比べられます。
相続した家で使える特例
| 特例 | 効果 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 空き家の3,000万円控除 | 利益から最大3,000万円を差し引く(その家と土地を相続した人が3人以上なら、2024年以降の売却は2,000万円) | 亡くなる直前に亡くなった人が一人で住んでいた、1981年5月31日以前の建築、耐震改修か取り壊し(売った翌年2月15日までに買主が行う場合も可)、売却額1億円以下、相続した年の3年後の年末までに売る、2027年12月31日までの売却 など |
| 取得費加算の特例 | 払った相続税の一部を取得費に足す | 相続税を払った人が、相続から約3年10か月以内に売る |
| 低未利用土地の100万円控除 | 土地部分の利益から最大100万円を差し引く | 都市計画区域内の使われていない土地(建物付きでも可)、売った年の1月1日時点で所有期間5年超、売却額が建物を含めて500万円以下(市街化区域などは800万円以下)、市区町村の確認書が必要、2028年12月31日までの売却 |
| マイホームの3,000万円控除 | 利益から最大3,000万円を差し引く | 売る人自身が住んでいる(または住まなくなった年の3年後の12月31日までに売る)家に限る。親が住んでいた家を相続して売る場合は使えない |
空き家の3,000万円控除と取得費加算の特例は、同じ家・土地に両方は使えません(取得費加算は、相続税がかかった人だけが使えます)。どちらが得かは金額で変わるので、両方で計算して比べてください。
確定申告の時期と必要なもの
不動産を売って利益が出たら、売った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をします(期限が土日祝日なら翌平日)。会社員の人も、年末調整とは別に申告が必要です。特例は、確定申告をしないと使えません。
主に必要な書類
- 確定申告書(第一表・第二表・分離課税用の第三表)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売ったときと買ったときの売買契約書の写し、仲介手数料などの領収書
- 特例を使う場合は、それぞれの特例で決められた書類(空き家の3,000万円控除なら、市区町村が出す「被相続人居住用家屋等確認書」など)
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使うと、画面の案内にそってパソコンやスマホで作成できます。
よくある質問
売って損をした場合も申告は必要ですか?
利益が出ていなければ譲渡所得税はかからないため、この売却について申告する必要は通常ありません(ほかの所得で申告が必要な人は別です)。一方、空き家の3,000万円控除などの特例を使って税金がゼロになる場合は、申告が必要です。
兄弟で共有している家を売った場合は?
売ったお金は持分に応じて分け、それぞれが自分の分の譲渡所得を計算して、各自で確定申告します。
相続税と譲渡所得税は二重にかかるのですか?
別の税金なので、両方かかることがあります。その負担を軽くするのが「取得費加算の特例」で、払った相続税の一部を取得費に足せます。相続から約3年10か月以内に売ることが条件です。
売ったお金は、いつ税金として払うのですか?
所得税は、売った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をして納めます。住民税は確定申告の後に市区町村が計算し、通知に従って納めます(会社員は給与からの天引きになることが多いです)。売った直後に払うわけではないので、納税分を取っておきましょう。
売ったことで、ほかに影響はありますか?
売却で出た利益は、翌年度の国民健康保険料や後期高齢者医療の保険料の計算に影響することがあります。加入している人は、お住まいの市区町村で確認してください。
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出典と、この記事の作り方
実家ノート編集部が、下の公的資料を読んで作成しました。法令の内容は 2026年10月3日 に確認しています。制度は改正されることがあるため、申告や手続きの前に、必ず出典元と税務署・専門家にご確認ください。
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき
- 国税庁 No.3261 非業務用建物の減価償却
- 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国税庁 No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁 No.7108 不動産の譲渡に関する契約書の印紙税の軽減措置
- 国税庁 防衛特別所得税・復興特別所得税に関するQ&A(令和8年5月)