相続した借地権(借地の上の家)の売り方
- 借地権の相続に、地主の承諾はいりません。売るときは、原則として地主の承諾が必要です(土地の賃借権の場合。地上権なら不要)。
- 売り方は「地主に買ってもらう」「承諾を得て第三者に売る」「底地と一緒に売る」「交換する」の4つ。地主が承諾しないときは、裁判所に許可を求められます。
- 買い手は契約の残り期間を気にします。1992年7月31日以前に始まった借地は、更新後も旧借地法のルールで期間が決まります。
- 旧法の借地で、期間の定めがない(短すぎて無効な場合を含む)か、更新後の期間が法律どおり(堅固30年・堅固でない20年)の場合、建物が朽ち果てると借地権がなくなります。古い家は放置しないようにします。
借地の家を相続したら
- 地主の承諾はいらない:相続は借地権の「譲渡」にあたらないためです。ただし、遺言で借地権を「遺贈する」とされている場合(特定遺贈)は、相続人であっても承諾が必要とされます(「相続させる」と書かれた遺言なら不要)。
- 地主に連絡し、地代を払い続ける:相続人が地代を払う立場を引き継ぎます。地代を滞納すると、契約を解除される原因になります。
- 建物の相続登記をする:相続登記は2024年4月から義務になりました。相続で取得したことを知った日から3年以内で、2024年3月以前の相続は2027年3月31日までです。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。借地権を第三者に主張する根拠は借地人の名義の建物の登記なので、家族の名義にしないよう注意します。売るときにも、建物を相続人の名義にしておく必要があります。自分で相続登記する手順
- 契約書を探す:最初の契約日、期間、建物の種類、地代、増改築や譲渡についての決まりを確認します。見つからなければ地主に写しを頼みます。
今の契約がいつまでか計算する
最初の契約の日と期間を入れると、旧借地法・借地借家法のルールに沿って更新を重ねた場合の今の契約期間と満了日を計算します。古い契約書しか手元にない場合に便利です。入力した内容はこの端末から送信されません。
今の満了日が分かっている場合(更新の契約書がある)
借地権の売り方(4つ)
地主に建物と借地権を買い取ってもらいます。地主にとっては土地の完全な持ち主に戻れるので、話がまとまりやすい相手です。
地主の承諾を得て、一般の買主や借地権を扱う買取業者に売ります。承諾の際に承諾料(名義書換料)を求められることが多く、金額は話し合いで決めます。
地主と協力して、借地権と底地(地主の権利)をまとめて第三者に売り、代金を分けます。普通の土地として売れるので、買い手がつきやすくなります。
借地権の一部と底地の一部を交換し、それぞれが土地の一部を完全に持つ形にします。その後、自分の分を売れます。
期間が満了して更新されない場合は、地主に建物を時価で買い取るよう請求できます(建物買取請求権)。また、地主が承諾せず裁判所の許可もないまま第三者が建物を買った場合、その買主は地主に建物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法14条)。
地主が承諾しないとき
土地を借りる権利(賃借権)を地主に無断で売ると、契約を解除される原因になります(民法612条)。地主に不利になるおそれがないのに承諾してもらえない場合は、売る前に裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられます(借地借家法19条)。
- 裁判所は許可の条件として、借地人にお金の支払い(財産上の給付)を命じたり、地代などの条件を変えたりすることがあります。
- 申し立てを受けた地主は、裁判所が決める期間内に、自分が建物と借地権を買い取ると申し立てることができます(介入権)。その場合の価格は裁判所が決めます。
売る前に気をつけること
- 残りの期間:残り期間が短いと、買主が住宅ローンを組みにくくなることがあります。上のツールで確認し、更新の時期が近ければ地主と話しておきます。
- 更新は原則として続く:建物があれば、地主が更新を断るには「正当な理由」が必要です。旧法・新法とも同じ考え方です。
- 旧法の「朽廃」:旧法の借地で、期間の定めがない(短すぎて無効な場合を含む)か、更新後の期間が法律どおり(堅固30年・堅固でない20年)の場合、建物が朽ち果てて使えない状態になると借地権がなくなります。契約で法律より長い期間を決めていて、その期間の途中なら、朽廃ではなくなりません。
- 建て替え・増改築の約束:契約に増改築を制限する決まりがあると、建て替えるときに地主の承諾が必要です。承諾が得られなくても、裁判所に「承諾に代わる許可」を求められます(借地借家法17条。旧法の借地にも同じ制度があります)。買主にとって大事な条件なので、売る前に確認します。
- 地代の滞納:滞納があると契約を解除されるおそれがあり、解除されると建物の買取請求もできません。売却の妨げにもなります。
- 税金の特例:亡くなった人が一人で住んでいた1981年5月31日以前の家なら、借地権付きで売っても空き家の3,000万円控除の対象になり得ます(借地権も「土地の上の権利」として含まれます)。相続税を払った場合は、取得費加算の特例も使えます(2つは一緒には使えません)。売却の税金
借地権の評価額(相続税)
相続税の計算では、借地権は「その土地を自分で使っている場合の評価額(自用地の価額)×借地権割合」で評価します。借地権割合は、路線価図の路線価の数字の後ろにある記号で分かります(倍率地域では評価倍率表に載っています。A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。たとえば「300D」なら、1㎡あたり30万円で、借地権割合は60%です。借地権の取引の慣行がない地域では、借地権を評価しない扱いがあります。
この評価額は相続税のためのもので、実際に売れる価格とは違います。定期借地権や、権利金のない特別な契約(相当の地代・無償返還の届出)の場合は、計算方法が変わります。土地の評価の基本は土地の価格の調べ方をご覧ください。
よくある質問
借地の家を相続するのに、地主の承諾や名義書換料は必要ですか?
相続は借地権の「譲渡」にあたらないため、地主の承諾は不要で、名義書換料を払う法律上の義務もないと一般に解されています。ただし、遺言で借地権を「遺贈する」とされている場合(特定遺贈)は、相続人であっても地主の承諾が必要とされます(「相続させる」と書かれた遺言なら不要)。
契約書が見つかりません。期間はどうなりますか?
契約書がなくても、期間を決めていた可能性はあります。まず地主に写しをもらえないか相談してください。地代の領収書や、建物を建てた時期も手がかりになります。どうしても期間の定めが確認できない場合は、定めがないものとして計算するのが一つの目安です。1992年7月31日以前に始まった借地なら、最初の期間は契約で決めた建物の種類によって60年(堅固)か30年(それ以外・種類の定めがない場合)で、その後は30年か20年ごとの更新になります。1992年8月以降なら30年、更新後は20年、10年です。上のツールで今の期間を計算できます。
借地権を地主に返すとお金はもらえますか?
期間が満了して更新されない場合は、建物を時価で買い取るよう地主に請求できます(建物買取請求権)。ただし、地代の滞納などで契約を解除された場合は、この請求はできません。期間の途中で借地人の都合で返す場合は、契約に解約の定めがなければ地主の同意が必要で、お金を受け取れるかは話し合いしだいです。更地にして返すよう求められることもあります。
承諾料(名義書換料)はいくらですか?
金額は法律で決まっていません。地主との話し合いで決めます。地主が承諾しないときに裁判所が承諾に代わる許可をする場合、借地人にお金の支払い(財産上の給付)を命じることがあり、その額は裁判所が事情を考えて決めます。
古い木造の家ですが、そのまま放っておいても大丈夫ですか?
旧法の借地で、期間の定めがない(短すぎて無効な場合を含む)か、更新後の期間が法律どおり(堅固30年・堅固でない20年)の場合、建物が朽ち果てて使えない状態(朽廃)になると、期間の途中でも借地権がなくなります。売るつもりなら、雨漏りの修繕など最低限の手入れを続け、早めに動くことをおすすめします。
次にやること
出典と、この記事の作り方
実家ノート編集部が、下の公的資料を読んで作成しました。法令の内容は 2026年10月3日 に確認しています。制度は改正されることがあるため、申告や手続きの前に、必ず出典元と税務署・専門家にご確認ください。