負動産(相続したいらない土地・家)の手放し方
- まず本当に売れないかを確かめます。買取業者や隣の人なら買うことがあります。
- 相続を知ってから3か月以内なら相続放棄もできますが、預貯金を含めてすべてを手放すことになります。
- 相続した土地は、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえることがあります。審査手数料は1筆14,000円、負担金は基本20万円(市街地の宅地・一部の農地・森林は面積で計算)。建物は先に取り壊します。
- 持ち続けると、固定資産税のほか、塀や木が倒れて人にけがをさせたときなどの責任も負います。
負動産とは
「負動産」は法律の言葉ではなく、売れない・使い道がないのに、固定資産税や草刈りなどの費用と手間だけがかかり続ける不動産をさす一般的な言い方です。地方の空き家、山林、農地、別荘地などで多く、相続で突然持ち主になるケースがよくあります。
手放す前に確認すること
- 相続を知ってから3か月以内か:3か月以内なら、相続放棄という選択肢があります。ただし土地だけを放棄することはできません。
- 本当に売れないか:仲介で売れなくても、訳ありの物件を扱う買取業者や、土地を広げたい隣の人なら買うことがあります。空き家の買取
- どんな土地か:地目(宅地・田畑・山林など)、面積、境界が分かるか、建物や木があるかを、登記事項証明書と現地で確認します。国庫帰属の可否と費用に関わります。
- 持ち続けたら毎年いくらかかるか:固定資産税の納税通知書と、草刈り・管理・交通費などを書き出します。
手放し方の比較
お金を受け取って手放せる可能性があるので、最初に試します。値段がつかなくても、引き取ってくれる相手が見つかることがあります。
市区町村や隣の人、法人に無償で譲る方法です。市区町村は、使い道や売れる見込みがない土地は原則受け付けません。
相続土地国庫帰属制度。審査手数料と負担金を払い、条件を満たせば国が引き取ります。建物は先に取り壊します。
相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ。預貯金なども含めすべてを手放し、土地は次の順位の相続人(兄弟など)に移ります。それまでに財産を処分すると放棄できなくなります。放棄の時に土地を現に占有していれば、引き渡すまで保存の義務が残ります。
国に引き取ってもらう費用を計算する
土地を1筆ずつ入れると、相続土地国庫帰属の審査手数料と負担金を法令の算定式で計算し、持ち続けた場合の何年分にあたるかを出します。入力した内容はこの端末から送信されません。
国庫帰属の条件と流れ
申請できる人
相続(相続人への遺贈を含む)で土地を取得した人です。制度が始まった2023年4月27日より前に相続した土地も対象です。生前贈与や売買で取得した土地は対象外です。相続登記をしていなくても、相続を証明する戸籍などを付ければ申請できます。共有の土地は、共有者全員で申請します。
申請できない土地(却下)
- 建物がある土地
- 抵当権などの担保や、他人が使う権利が設定されている土地
- 通路など、他人が使う予定の土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が分からない土地、持ち主や範囲に争いがある土地
承認されない土地(不承認)
- 管理に手間と費用がかかる崖がある土地
- 邪魔になる工作物・車両・樹木などがある土地
- 地下に取り除くべき物がある土地
- 隣の人との争いを解決しないと管理できない土地 など
2026年8月31日現在の不承認100件の理由で多いのは、工作物などがある(46件)、森林の手入れが必要(37件)でした。
流れと費用
- 法務局に相談する:事前相談は近くの法務局でもできます。
- 申請する:申請先は、土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局です(支局・出張所では受け付けません)。審査手数料は土地1筆14,000円(収入印紙)。却下・不承認・取下げでも返ってきません。審査は1筆ごとに行われます。
- 承認されたら負担金を納める:通知を受けた日から30日以内に納めないと、承認の効力がなくなります。
- 国の土地になる:負担金を納めた時に、土地の持ち主が国に変わります。
持ち続ける場合の責任
- 固定資産税:使っていなくても毎年かかります。
- 塀・建物・木の責任:塀や建物、木の管理に欠陥があって他人に損害を与えた場合、まず占有者が、占有者が注意を尽くしていれば所有者が賠償します(民法717条)。所有者は、注意していても責任を免れません。
- 空き家の管理:管理が不十分で市区町村から勧告を受けると、土地の固定資産税の特例が外れます。空き家の放置リスク
- 次の世代に引き継がれる:手放さなければ、自分が亡くなった後は子どもが相続することになります。
農地・山林を相続したら
- 農地:相続で農地を取得したら、農業委員会に届け出ます(農地法3条の3。法律上は「遅滞なく」、国の案内ではおおむね10か月以内)。届け出ないと10万円以下の過料の対象です。農地を売ったり譲ったりするには、原則として農業委員会の許可が必要です(農地法3条)。
- 山林:相続などで森林(地域森林計画の対象の森林)の土地の持ち主になったら、面積にかかわらず、持ち主になった日から90日以内に市町村長へ届け出ます(森林法の届出制度)。
よくある質問
要らない土地だけ相続放棄できますか?
できません。相続放棄をすると、預貯金なども含めてすべての財産を受け継がないことになります。期限は相続を知った時から3か月以内です(家庭裁判所に申し立てれば延ばせることがあります)。要らない土地だけを手放したい場合は、相続した後に、売る・国に引き取ってもらうなどの方法を考えます。
国庫帰属は、申請すれば必ず引き取ってもらえますか?
いいえ。建物がある、境界が分からないなどの土地は申請自体ができず(却下)、崖がある・木や工作物があるなどで管理に手間がかかる土地は承認されません(不承認)。審査手数料は、却下や不承認でも返ってきません。2026年8月31日現在、申請5,997件のうち、国が引き取ったのは3,119件、却下85件、不承認100件、取下げ1,139件です(残りは審査中など)。
市区町村に寄付すれば引き取ってもらえますか?
多くの市区町村は、使い道や売れる見込みがある土地でなければ寄付を受け付けていません。たとえば新潟市は「行政活用価値又は換価価値が見込まれるもの」、世田谷区は区の計画に沿って活用できるものや、換金して寄附の目的に使える見込みがあるものを受け入れるとしています。まず家のある市区町村に問い合わせてください。
国庫帰属の申請に、相続登記は必要ですか?
相続登記をしていなくても申請できます。その場合は、相続したことが分かる戸籍などを付けます。国に引き取られた場合、国への名義の変更は国が行います。取下げ・却下・不承認で土地が手元に残った場合は、相続登記(3年以内の義務)が必要です。
兄弟と共有している土地も申請できますか?
共有の土地は、共有者全員で申請します。全員がそろえば、相続以外の理由で持分を持っている共有者も一緒に申請できます。
次にやること
出典と、この記事の作り方
実家ノート編集部が、下の公的資料を読んで作成しました。法令の内容は 2026年10月3日 に確認しています。制度は改正されることがあるため、申告や手続きの前に、必ず出典元と税務署・専門家にご確認ください。