相続した実家を売って分ける(換価分割)の進め方

更新日:執筆:実家ノート編集部出典と作り方

30秒でわかる結論
  • 換価分割は、遺産分割で「実家を売って、代金を決めた割合で分ける」方法です。兄弟が公平に分けやすいのが長所です。
  • 遺産分割協議書に取り分の割合・費用の扱い・登記の名義を書きます。下のツールで条項の下書きを作れます。
  • 代表者1人の名義で登記して売っても、換価のためと協議書に書き、そのとおりに分ければ贈与税は問題にならないとされています。
  • 売った利益の税金は、相続人それぞれが自分の取り分で確定申告します。空き家の3,000万円控除も一人ひとりが使えます。

協議書の条項を作る

この記事の目次
  1. 換価分割とは(ほかの分け方との違い)
  2. 売って分けるまでの流れ
  3. 遺産分割協議書の「売って分ける」条項を作る
  4. 登記は全員の名義か、代表者1人の名義か
  5. 税金は一人ひとりが申告する
  6. 話し合いで決めておくこと
  7. よくある質問

換価分割とは(ほかの分け方との違い)

換価分割(売って分ける)

売った代金を割合で分けます。お金で分けるので公平にしやすく、住む人がいない実家に向いています。

代償分割(1人が受け継ぐ)

1人が家を相続し、ほかの兄弟にお金(代償金)を払います。住み続けたい人がいる場合に。受け継ぐ人にお金が必要です。

共有のまま

決められない場合の先送りになりがちです。売る・取り壊すには全員の同意が必要で、後で困りやすくなります。共有持分で何をするのに誰の同意がいるか

売って分けるか、1人が受け継ぐかで、一人ひとりの手取りや税金の特例の使い方が変わります。兄弟で分けるシミュレーターで比べられます。

売って分けるまでの流れ

  1. 相続人と遺産を確定する:戸籍で相続人を確認し、実家の評価額や売れそうな価格を調べます。
  2. 遺産分割協議をする:売って分けること、取り分の割合、費用の扱い、誰の名義にするかを決めます。
  3. 遺産分割協議書を作る:相続人全員が署名し、実印を押して印鑑証明書を付けます。
  4. 相続登記をする:全員の共有名義か、代表者1人の名義にします(相続登記は、遺産分割で取得した場合は分割の日から3年以内の義務です)。自分で相続登記する手順
  5. 売る:不動産会社に査定を頼み、売買契約・引き渡しをします。
  6. 代金を分ける:費用を差し引き、協議書の割合で分けます。振り込みの記録を残します。
  7. 一人ひとりが確定申告する:売った年の翌年に、自分の取り分の譲渡所得を申告します。

遺産分割協議書の「売って分ける」条項を作る

相続人と取り分を入れると、遺産分割協議書に書く換価分割の条項の下書きを作ります。売れそうな価格を入れると、一人ひとりの受け取り額の目安も出します。入力した内容はこの端末から送信されません。

登記事項証明書のとおりに書くのが基本です。ここでは下書き用に、所在と地番・家屋番号を簡単に入れてください

相続人と取り分

登記の名義
万円
万円

登記は全員の名義か、代表者1人の名義か

全員の共有名義

取り分の割合で全員の名義にします。売るときは全員が売買契約と登記の手続きに加わります(遠方なら書類のやり取り)。代金は買主から各自に払ってもらうこともでき、分け方の誤解が起きにくい方法です。

代表者1人の名義

売る手続きを代表者が1人で進められ、早く売りやすくなります。協議書に「換価のための取得」「代金の分け方と期限」をはっきり書き、そのとおりに分ければ贈与税は問題にならないとされています。代表者を信頼できることが前提です。空き家の3,000万円控除をほかの相続人も使うつもりなら、事前に税務署か税理士に確認してください。

税金は一人ひとりが申告する

  • 譲渡所得の申告:売って利益が出たら、各相続人が自分の取り分の割合で、売った年の翌年に確定申告をします。仲介手数料などの費用も取り分で分けて差し引きます。
  • 遺産分割の前に売った場合:申告の期限までに取り分が決まっていなければ法定相続分で申告し、後で取り分が決まっても申告し直すことはできません。
  • 空き家の3,000万円控除:条件を満たせば一人ひとりが使えます。家と土地を相続した人が3人以上なら、1人2,000万円までです(2024年以降の売却)。売却代金1億円以下、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(現行法では2027年12月31日までの売却)などの条件があります。使えるか判定する
  • 取得費加算の特例:相続税を払った人は、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば使えます(空き家の控除とはどちらか一方)。取得費加算の特例

話し合いで決めておくこと

  • いくら以上なら売るか:最低価格や、値下げを決める方法。
  • いつまでに売るか:空き家の控除などの期限を考えて決めます。
  • 売るまでの費用:固定資産税、片付け、解体、測量などを誰が立て替え、どう精算するか。
  • 家財:形見分けと処分のしかた。実家の片付け

よくある質問

遺産分割の前に売ってしまってもいいですか?

売れます。その場合は法定相続分で相続登記をし、全員で売ります。ただし、売った年の確定申告の期限までに遺産分割で取り分が決まっていないと、各相続人は法定相続分で譲渡所得を申告することになり、後で取り分が決まっても申告し直す(更正の請求)ことはできません。税金の負担を取り分に合わせたいなら、先に遺産分割を済ませておくのが安全です。なお、遺産分割の前に売った代金は、原則として遺産分割の対象から外れるため、代金の分け方も全員で合意して書面にしておきましょう。

代表者1人の名義にすると、贈与税はかかりませんか?

国税庁は、遺産分割の調停で売って分けることを決め、売るための便宜として1人の名義で登記し、調停で決めたとおりに代金を分けた場合は、贈与税の課税は問題にならないとしています(調停の事例ですが、話し合いによる協議でも同じように扱われると一般に解されています)。遺産分割協議書に「換価のための登記であること」と「代金の分け方」をはっきり書き、そのとおりに分けることが大切です。

売れなかったらどうなりますか?

協議書に、売れなかった場合の取り決め(価格を下げる条件、期限、もう一度協議する、など)を書いておくと、もめにくくなります。決めていない場合は、相続人全員で改めて話し合います。

相続人に未成年や認知症の人がいます。

未成年の子と親が一緒に相続人になる場合は、家庭裁判所で子の特別代理人を選んでもらう必要があります(子が複数なら子ごとに)。家庭裁判所は通常、子に法定相続分が確保されているかを見るので、取り分を決めるときは注意してください。判断能力が十分でない人がいる場合は、成年後見人などが代わりに協議に加わります。どちらも時間がかかるので、早めに準備してください。

次にやること

出典と、この記事の作り方

実家ノート編集部が、下の公的資料を読んで作成しました。法令の内容は 2026年10月3日 に確認しています。制度は改正されることがあるため、申告や手続きの前に、必ず出典元と税務署・専門家にご確認ください。