実家じまいの進め方|手順と、解体・売却で損しない時期
- 実家じまいは「片付け」「家の行き先を決める(売る・解体・国に引き取ってもらう・持つ)」「解約と届出」の3つです。
- 最初に、相続放棄するかを決めます(3か月以内)。家財の処分や解体・売却は、その判断の後にします。
- 解体は時期に注意。1月1日に家がない土地は、その年度の固定資産税で住宅用地の特例が使えず、税金が上がります。
- 解体したら、1か月以内に建物の滅失登記が必要です(怠ると10万円以下の過料の対象)。
- 亡くなった人あての郵便は転送できません。送り元に連絡して送り先を変えてもらいます。
実家じまいでやること(全体の流れ)
- 相続放棄するか決める(3か月以内):借金が多いときは相続放棄を考えます。価値のある家財を売ったり捨てたり、家を解体・売却したりすると、相続を認めたとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります(民法921条)。詳しく
- 遺言書と重要書類を探し、誰が実家を相続するか決める:遺言書がなければ、相続人全員で話し合います(遺産分割)。兄弟で分けるシミュレーター
- 相続登記をする(3年以内):家の名義を相続した人に変えます。売るには、先に相続登記が必要です。自分でやる手順
- 片付ける:重要書類を探し、残す物を家族で決めてから手放します。片付けの進め方
- 家の行き先を決めて実行する:家付きで売る、解体して土地を売る、国に引き取ってもらう、当面持つ(貸す)のどれかです(比較)。
- 解約・届出をする:電気・ガス・水道、郵便、火災保険、固定資産税の窓口など(チェック)。
2〜4は並行して進めてかまいません。急ぐべきなのは1の判断と、売る場合の税金の特例の期限です。
実家じまいの段取り表を作る
亡くなった日と家の行き先、解体日や売る日の予定を入れると、税金の特例と手続きの期限を日付順に並べ、解体と売却の時期に損がないかを確かめます。入力した内容はこの端末から送信されません。
解体の予定
売る予定
家の行き先は4つ
解体費用をかけずに売れます。古い家でも、建て替えやリフォームを考える買主や、買取の業者に売れることがあります。
古い家があると買い手がつきにくい地域では、更地のほうが売りやすいことがあります。解体費用は売る前に自分で払います。
売れない土地を、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう方法です。建物がある土地は申請できないため、先に解体が必要です。
思い出がある、将来使うかもしれない、という場合です。固定資産税と管理の手間がかかり続けます。
どれが得かは、売った場合の手取りと、持ち続けた場合の税金・管理費で比べると判断できます。売る?持つ?手取り比較で計算できます。
解体するなら:時期と手続き
解体の時期は「1月1日」を基準に考える
固定資産税は、毎年1月1日の状態で1年分が決まります(地方税法359条)。家が建っている土地は「住宅用地の特例」で、200㎡以下の部分は課税標準が6分の1、200㎡を超える部分は3分の1になっています(都市計画税は3分の1・3分の2)。1月1日に家がないと、その年度はこの特例が使えません。
- 解体して売る:解体を始めた年のうちに引き渡し、名義変更の登記まで済ませれば、翌年度の税金は買主にかかります。固定資産税は1月1日に登記簿に載っている持ち主にかかり、法務局は12月29日〜1月3日が休みなので、年末の引き渡しは早めにします。
- 売れるまで時間がかかりそう:解体工事を年明け(1月2日以降)に始めると、特例が外れる年度を1年遅らせられます。
- 工事中に1月1日をまたぐと:家があるかどうかは登記ではなく現況で判断されるため、取り壊し中で住めない状態だと、家がないものとして扱われることがあります。
- 年の途中で解体しても、その年度の税額は変わりません。
解体の前後にする手続き
- 補助金を確認する:市区町村によっては、古い空き家の解体費用を補助しています。工事の前に申し込みが必要なことが多いので、契約の前に確認します。
- 業者を選び、書面で見積もりを取る:家財が残っている場合、その処分を含むかも確認します。
- 石綿(アスベスト)の事前調査:解体の前に、業者が必ず調べます。2023年10月からは資格者による調査が必要で、延べ床面積80㎡以上の解体では、結果を業者が都道府県等と労働基準監督署に報告します。
- 建設リサイクル法の届出:延べ床面積80㎡以上の解体は、発注者(家の持ち主)が工事を始める7日前までに都道府県知事等へ届け出ます。業者が代わりに手続きすることも多いので、誰が出すか確認します。
- 建物の滅失登記(解体から1か月以内):登記されている家は、取り壊した日から1か月以内に法務局へ申請します(不動産登記法57条)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。登記されていない家は、市区町村の資産税の窓口に取り壊しを届け出ます。
空き家の3,000万円控除と解体
亡くなった人が一人で住んでいた1981年5月31日以前の家なら、売った利益から最大3,000万円(家と土地を相続した人が3人以上なら1人2,000万円)を差し引けます。売る前に自分で取り壊すか、売った年の翌年2月15日までに買主が取り壊す(または耐震改修する)ことが条件の一つです。期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(多くは相続した年の3年後の年末。1月1日の相続なら2年後の年末)で、現行法では2027年12月31日までの売却が対象です。売却代金は1億円以下である必要があります。
使うには、家のある市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」をもらい、売った翌年に確定申告をします。確認書の申請では、電気・ガス・水道の使用中止が分かる書類などで、相続から売るまで空き家だったことを示します。また、相続税を払った人が使える取得費加算の特例とは一緒に使えないので、どちらが有利か比べて選びます。
空き家のまま持つなら
- 管理を続ける:管理が不十分で市区町村から「管理不全空家」として勧告を受けると、土地の住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がります(2023年12月から)。
- 火災保険を確認する:住む人がいなくなると建物の使い方が変わるため、保険会社への連絡が必要な場合があります。補償が続くか確認してください。
- 貸す・住むと特例に影響:空き家の3,000万円控除は、相続から売るまでに貸したり住んだりすると使えません。
空き家の放置リスクと選択肢は空き家の総合ガイドで詳しく解説しています。
解約・届出のチェック
- 郵便:亡くなった人あての郵便は、家族が頼んでも転送できません。届いた郵便から送り元を調べ、死亡を伝えて送り先を変えてもらいます。
- 電気・ガス・水道:亡くなった人名義のままなら名義変更か解約をします。片付けや売却の内覧で使う予定があれば、終わるまで残しておくと便利です。空き家の3,000万円控除を使う場合は、使用中止の日などが確認書の申請で必要になることがあるので、解約の書類を保管します。
- 電話・ネット・新聞・定期購入:通帳の引き落としやクレジットカードの明細から探します。
- 火災保険・地震保険:名義変更、空き家になったことの連絡、売却や解体のときの解約。
- 固定資産税:相続した人に納税通知書が届くよう、市区町村からの案内に従って手続きします。家を取り壊したら登記か届出を。
- 町内会・自治会、近所へのあいさつ:空き家になることと連絡先を伝えておくと、異変に気付いてもらえます。
よくある質問
実家じまいは、いつまでに終わらせればいいですか?
実家じまい全体に法律の期限はありません。ただし途中の手続きには期限があります。相続放棄の判断は3か月以内、相続登記は3年以内です。売る場合は、空き家の3,000万円控除の期限(相続した年の3年後の年末。1月1日の相続なら2年後の年末。現行法では2027年12月31日までの売却が対象)も意識してください。上の段取り表に亡くなった日と予定を入れると、自分の期限が一覧になります。
家を解体すると、固定資産税は6倍になるのですか?
家が建っている土地は「住宅用地の特例」で、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1(200㎡を超える部分は3分の1)になっています。1月1日に家がないと、その年度はこの特例が使えないため、土地の税金が上がります。ただし、もともと税額を急に上げない調整などがあるため、ちょうど6倍になるとは限りません。正確な額は市区町村の資産税の窓口で確認できます。
年の途中で家を解体したら、その年の固定資産税は安くなりますか?
なりません。固定資産税は1月1日の状態で1年分が決まるので、年の途中で取り壊しても、その年度の家と土地の税額は変わりません。
亡くなった親あての郵便を、自分の家に転送できますか?
できません。日本郵便は、亡くなった人あての郵便物は家族から頼まれても転送できないとしています。金融機関や保険会社、公共料金の会社などに死亡を伝え、送り先を変えてもらってください。施設に入った親の郵便は、転居届を出せば届出日から1年間転送されます。
解体費用の補助金はありますか?
市区町村によっては、古い空き家を取り壊す費用の一部を補助しています。国も、空き家対策の計画を作った市区町村の取り組みを支援しています。対象や金額、工事の前に申し込む必要があるかどうかは市区町村ごとに違うので、解体の契約をする前に、家のある市区町村に確認してください。
次にやること
出典と、この記事の作り方
実家ノート編集部が、下の公的資料を読んで作成しました。法令の内容は 2026年10月3日 に確認しています。制度は改正されることがあるため、申告や手続きの前に、必ず出典元と税務署・専門家にご確認ください。
- e-Gov法令検索 民法(915条・921条)
- 法務省 相続登記の申請義務化
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 総務省 固定資産税の概要(賦課期日・住宅用地の特例)
- e-Gov法令検索 地方税法(349条の3の2・359条・702条の3)
- e-Gov法令検索 不動産登記法(57条・164条)
- 環境省 建設リサイクル法の概要
- 環境省 大気汚染防止法の改正(石綿の事前調査結果の報告)
- 厚生労働省 石綿事前調査結果報告システム
- 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(管理不全空家)
- 国土交通省 空き家対策特設サイト(解体の補助)
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金
- 日本郵便 転居届(1年間の転送)
- 日本郵便 亡くなった人あての郵便物の転送
- 日本損害保険協会 そんがいほけん相談室 Q&A(契約後の通知)
- 船橋市 家屋を取り壊したときの手続き(登記・未登記)